ひきこもりノート

ひきこもり歴約2年。ひきこもりについて知った事。

斎藤環 社会的ひきこもり 終わらない思春期 1998年 PHP新書

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はじめに

社会的ひきこもりは一説によると(social withdrawl)数十万人

斎藤環の臨床経験からすると、社会的ひきこもりが長期化すると多様な病理の温床にないりやすい。

本書は理論と実践に分かれる

第一章 理論編

【社会的ひきこもりとは】

社会的ひきこもりとは、家族以外のあらゆる対人関係をさけ、そこから撤退してしまうこと。

 本のなかでの社会的ひきこもりの定義、二十代後半までに問題化し、六ヶ月以上、自宅にひきこもって社会参加をしない状態が持続しており、ほかの精神障害がその第一の原因とは考えにくいもの。この問題は思春期の問題である。

 

 社会からひきこもって行く過程はさまざまだが共通点もある。

圧倒的に男性が多く、長男によくみられ、内向的で家族では「手の掛からないよい子」と見られがち 活発な子も引きこもる、女性もいるが長期化しない。高学歴中流家庭、仕事熱心な父、養育に無関心。過敏で過干渉の母

 

ひきこもりからは自然に回復は殆どしない

 

【社会的ひきこもりの症状と経過】

ひきこもり状態に入るきっかけは不登校がもっとも多い

ひきこもり状態にもっとも多くみられる精神症状の一つが「対人恐怖症状」自己臭妄想、自己視線恐怖。醜形恐怖強迫神経症しばしば。子供返り、被害関係念慮、抑うつ気分、昼夜逆転。家族を避ける。葛藤から、家庭内暴力、自殺未遂。

その他
過食・拒食。心気症状。心身症。自律神経症状。薬物嗜癖

 

ひきこもりは、きっかけになった体験を鮮明に保っている

 

【さまざまな精神疾患に伴う「ひきこもり」】

精神科の病気は三つに分けられる。
心因性」ショックやストレス子供の頃の心の傷。脳の機能に問題なし。社会的ひきこもりもここに含まれる。
「内因性」脳の機能のなんらかの異常。スキゾフレ二ア、そううつ病
「外因性」器質性疾患。脳神経の実質的な異常があり、それが脳の機能に傷害をもたらし、それによって起こる疾患。CTスキャンMRI、脳波なので診断できる。精神発達遅滞、自閉症

 

 DSM-IVでのスキゾフレ二アの特徴。感情の変版化、著しい社会的孤立またはひきこもり、期待される発達レベルまで達しないこと、機能の著名な傷害、身辺の清潔と身だしなみの著名な傷害、会話の貧困や会話内容の貧困、自発性、興味、気力の著しい欠如

  

 回避性人格障害境界性人格障害、思春期妄想症、うつ病、循環性気分障害

分裂病人格障害はひきこもりと共通点があるが、反対の傾向が見られる。また、ひきこもり大学生のかなりがスチューデントアパシー 競争の回避 

 

無為に見えるが、無気力ではない
無気力になるパターンは2つ
1病気が進行し慢性化した結果。
2学習された無気力
2は単純すぎる。人間は、やったらいいとわかっているのにさぼってしまう非合理な存在だから。

 

ひきこもり問題の特異性を個人の病理として捉えようとするかぎり、その理解、対策は浅はかなものになる。日本のひきこもりは世界と比較して独特。社会的病理が反映されている。

 

中井久夫いわく。単純な心因の精神疾患は、単純な経かで改善していく事が多い。が逆に経化が長くこじれがちな疾患では、原因も一つだけということはあまりなく、さまざまな要因が複合的にからみあっている。

 

ひきこもりシステム

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ひきこもっていることそのものが外傷にひとしい。星の王子様の酒飲み「恥ずかしいから酒を飲むのだ」似たような悪循環。他者の介入が必要。

 

社会的ひきこもりの悪循環摸式図

 

世間体を気にし家族がひきこもりを隠し「抱え込み」。孤立し乖離。ひきこもり長期化へ。

 

第二章 実践編

 

引きこもりがそこにあることを認める。叱咤激励しない。

慢性化したものは、家族による保護と、専門家による治療なしに治療なしに立ち直ることができない。少なくとも著者は見たことが無い。

しかし、受容もしすぎると弊害がある。コミュニケーションをとる。

 

成熟とは「社会的な存在としての自分の位置づけについての安定したイメージを獲得し、他者との出会いによって過度に傷つけられない人」著者定義。

成熟がいかにして可能か。「外傷への免疫の獲得」という過程ではないか。心が傷つきそこから回復することは、感染症にかかり、回復する事に近い。他者のイメージが外傷をもたらすだけの、迫害的なイメージにとどまっている。「有効な他者のイメージを学習」

 

ひきこもり青年は傷つく事を恐れる。しかし、ひきこもりを続けている限り精神的成長は起こらない。ひきこもりにおいて、家族は他者ではない。長期ひきこもり事例の治療において重要なのは、「他者による介入をいかに有効に行うか」ということになる。

 

ひきこもり事例の治療は何故されなければいけないのか。タルコット・パーソンズ「病者は労働を免除され、治療を受ける権利がある。また病者の義務とは、治ろうとする意志を持ち、治療者に協力することである。

 

特効薬はない。一般的にひきこもりからの立ち直りは短くて半年、平均2~3年以上。適切な対応が行われた場合。焦りはなにももたらさない。慢性的な焦りはひきこもりシステムを強化してしまう。ただまてばいいわけでもない。「手をかけず目をかけよ」「愛は負けても、親切は勝つ」共感的態度。

 

「一方的奉仕」も駄目。本人は、母親が、尽くせば尽くすほど、自分が母親なしではやっていけない弱い存在だと思い知らされる。

 

ひきこもり青年は他人という鏡を持たない。客観的な象を結んでくれない。「力と可能性に満ちあふれた自分」とイメージが浮ぶ、一方「何の価値もない、生きていてもしょうがない人間」というイメージに打ちのめされたり、不安定でいびつな象しか結んでくれない。

 

自己愛は大切。それがないと人間は生きていけない。ひきこもりは自己愛が健全、安全に保たれない。思春期以降の自己愛は異性愛を介在しなければうまく機能しない。

 

立ち直りには二段階ある。一段階。本人と家族、社会と家族という2つの接点を回復させる事。第二段階。本人と社会の接点の回復。しばしば社会と個人をいきなり繋げようとするケースがしばしば。全寮制の学校に強制的におくりこんだり、単身生活を始めさせたり、無理に就職させたりすると、初期は軌道にのるかと思えてもじきに本人が潰れることが多い。

 

家族システムと個人システムをどう連動させるか、著者いわくここがもっとも難しい。

もっとも重要なのは両親。両親の葛藤が深刻なら夫婦カウンセリングを進める。

 

第一の目標「家庭の中で本人の気持ちを安定させる事」本人は想像を絶するほど葛藤している「怠け」ととらえない。

第二の目標。本人との会話の機会を増やし、信頼関係をとりもどす。皮肉やあてこすりを言わない。

 

恨まれていることがある。なぜ恨んでいるのか丁寧に聞く必要がある。

 

ひきこもりの治療は長期戦。全てをなげうつといった態度ではなく、精神的バランスを保ちつつ、無理せず一部の労力をつかう。

 

声をかける注意点。お前や君、~さんと言わない。あなたがいい。将来、結婚、仕事の話、同年代の人のはタブー。時事的、社会的なことがらがいい。断定的な口調をしない。

 

金銭について。小遣いは十分に与える。金額は必ず、一定に。その額については、本人と相談して決める。欲望を失うことは危険。

 

子供返りすることがある。スキンシップは駄目。

 

二次障害としての強迫症はコミュニケーションに問題があることが多い。

 

単身生活は自立の役にたたない。アパートにひきこもるから。

 

だらしなさは二次的な症状。受け入れる。部屋は聖域侵さない。共有の場所に物を置かせない。じっくり交渉して撤去させる。

 

基本は現状維持。退学や退職を望むが、実際すると「社会のどこにも自分の籍がない」という事実が、いっそう重くのしかかる。対人関係や視線に過敏になっているので転居しても変わらない。ただし転居には成功例もある。

 

家庭内暴力は受容しない。家庭内暴力は憎しみではなく悲しみからきている。本人を刺激しない。何が刺激になっているかは難しい。他人を介在させると、暴力がやむケースがある。暴力によっては警察を呼ぶ。

 

治療機関。精神科医のものがいい。臨床心理士心療内科医には有用なものもある。民間収容施設、催眠療法自己啓発セミナー、信仰宗教、その他あらゆる民間療法は有害なのものとして除外

 

精神科をどうえらぶか

大学付属病院は混んでいる。診断が簡略になりがち。初期のチェックには有用。単純なひきこもり状態といいきれなけれまずは大学病医院から

一般的な精神科を探すにはどうすればいいか。てっとり早いのは地元の保健所に相談する事。

書籍や図書館。治療期間のガイドブック。全国精神障害者家族連合会の資料がいい。

まずは電話して「思春期事例は扱っているか」「当面は本人が行けないが、両親のみでもかまわないか」と2つの点を確認する。

著者的には開設したての個人診療所やクリニックがおススメ。

治療者との信頼関係が大切。

 

パソコン・インターネットの可能性。パソコンは対人関係や社会との関係が回復される窓口。

 

入院治療も有効だが、一般的な精神病院はあまりおススメできない。比較的若い患者がおおく異性がいるところがいい。

 

家族は家族会などで連帯するのがいい。

 

対応が充分なのに進展しないのは例外。そういう場合はどこかがおかしい。問い直してみる。

 

30を節目に話し合う。1治療の見とおし2経済的見通し3社会参加の見直し

 

ひきこもりと社会病理

どの世代も前の世代からしたら副業にしか見えないものに燃えている。全共闘よりオタクが無気力であるとは言えない。

 

誰しも大学に入ることが当然のような価値観になった。受験につぐ、受験をくぐることは、社会参加の暫定的免除のほかには、何の特権も保障してくれない。このような過程で無気力に陥らないのは困難。

 

学校と社会では対人関係のありようが違う。役割意識の違い。社会人は可能性を断念し、組織で期待される一定の役割を引き受けることが義務となる。断念し、引き受けることは教育システムで学べない。

 

現在の教育システムは去勢を否認している。平等。多数決、個性「均質化」の局面と内申書、偏差値「差異化」の局面がある。均質であることを前提とした差異化、それは嫉妬や、いじめの温床になるが、別の話。教育システムはモラトリアム装置。学校はだれもが無限の可能性を秘めているとの幻想を強要される。去勢の否認。

 

ひきこもりは男性に圧倒的に多い。男性は就業、就学に関わっていなければ社会的に非難されやすい。一方、女性の場合、家事手伝いが可能。女性はひきこもりが問題視されにくい。女性は社会システムによって去勢されやすい。

 

典型的な偏差値エリートと登校拒否児は不適合の在り方において共通している。共通点は価値観の狭さと自己中心性。

 

ひきこもる若者は平等幻想を呪詛する。ひきこもる若者は去勢拒否の犠牲者として、終わらない思春期に呪縛されているのではないか。

 

ひきこもりは社会的束縛から逃れているという点において自由だが、もっとも不自由な状況に甘んじている。